市街化調整区域に本家があれば家は建つ?分家住宅の建築許可と4つの要件

市街化調整区域にある親の土地に家を建てたいと考えても、原則として建築ができないため、計画を諦めてしまう方は少なくありません。

しかし、長年その地域で暮らしてきた世帯の親族であれば「分家住宅」として特例的に建築が認められる制度があります

この記事では、分家住宅の建築許可を得るためにクリアすべき申請者・本家・土地・建物に関する4つの要件を一つずつ丁寧に解説します。

複雑な申請手続きの流れや、建てた後に売却や賃貸ができないといった重要な注意点まで網羅しているため、ご自身のケースで家を建てられるのかを判断する手助けになります。

目次

市街化調整区域の本家の土地に家を建てるための「分家住宅」制度

市街化調整区域にある土地には、原則として家などの建物を自由に建築できません。

しかし、昔からその地域で暮らす世帯の親族が家を建てる場合に限り、「分家住宅」として特例的に建築が認められる制度があります。

この制度を正しく理解するためには、まずなぜ市街化調整区域で建築が制限されているのか、そしてどのような目的で親族への特例が設けられているのかを知ることが大切です。

この制度は、あくまでも長年その地域で生活してきた世帯の権利を守るためのものであり、誰でも利用できるわけではない点を理解しておきましょう。

なぜ原則として住宅の建築ができないのか

市街化調整区域とは、無秩序な市街化を防ぎ、計画的な街づくりを進めるために定められたエリアのことです。

都市計画法に基づき、市街化を積極的に進める「市街化区域」と、市街化を抑制する「市街化調整区域」に分けられています。

この区域分けは「線引き」と呼ばれ、多くの自治体で1970年(昭和45年)頃に実施されました

市街化調整区域では、豊かな自然環境や農地を守ることが優先されます。

そのため、原則として住宅や商業施設などの新たな建築が厳しく制限されているのです。

このルールがあるおかげで、街が無計画に広がり、インフラ整備が追いつかなくなる事態を防いでいます。

親族のために特例として認められる建築許可

分家住宅とは、市街化調整区域が指定される前からその地域で暮らしてきた世帯(本家)の親族が、自己の居住用に建てる住宅を指します。

原則として建築ができない区域でありながら、特定の親族に建築が許可されるのは、主に以下の理由があるからです。

この制度は、あくまで本家の近くに住む家を必要としている親族のための救済措置です。

そのため、建築が許可される親族の範囲は、本家の世帯主から見て子や孫など原則として三親等以内の血族と定められています。

誰でも自由に土地を売買して家を建てられるわけではなく、厳格な要件のもとで運用される制度です。

分家住宅の建築許可を得るための4つの要件

分家住宅の建築許可を得るためには、申請者(あなた)、本家(親など)、土地、建物の4つの側面から定められた要件をすべて満たすことが最も重要です。

これらの条件は、あくまで自己の居住用住宅を必要とする親族のための特例であるため、非常に厳格に定められています。

それぞれの要件について、具体的に見ていきましょう。

申請者(あなた)に求められる条件

申請者の条件で重要なのは、本家との親族関係と、現在住宅に困っているという事実(住宅困窮性)を客観的に証明することです。

分家住宅の許可は、一人の申請者に対して「一生に一度」しか認められない厳しい制度です。

具体的には、本家の世帯主から見て子や孫、兄弟姉妹といった三親等以内の血族であることが求められます。

加えて、申請者や配偶者が他に住宅や建築可能な土地を所有しておらず、結婚や子どもの誕生で現在の住まいが手狭になったなど、新たに家を必要とする明確な理由が必要です。

ご自身がこれらの要件に当てはまることを、戸籍謄本や資産に関する証明書といった公的な書類で示す必要があります。

本家(親など)に求められる条件

本家に求められるのは、市街化調整区域が定められる前からその地域で生活してきたという実績です。

これは、長年その地域コミュニティに貢献してきた世帯を保護するための条件となります。

具体的には、多くの自治体で1970年頃に定められた市街化調整区域の「線引き」よりも前から、本家がその土地や周辺に住み、生活の基盤を置いていることが必要です。

自治体によっては、線引き後に適法に建てられた家で20年以上など、長期間継続して居住している場合も認められることがあります。

あわせて、市街化区域内に分家のために譲渡できるような他の適切な土地を持っていないことも条件です。

これらの条件は、分家制度が誰にでも適用されるものではなく、あくまで昔からその地域で暮らしてきた人々に対する例外的な措置であることを示しています。

土地に求められる条件

土地に関しては、どこにでも建てられるわけではなく、場所や広さに厳しい制限がある点が重要です。

無秩序な開発を防ぎ、周辺の環境を守るためのルールが定められています。

まず、建築予定地は本家が線引き前から所有している土地でなければなりません。

そして、周囲に家がなくポツンと一軒だけ建てることは基本的に認められず、すでに50棟以上の建築物が約50m以内の間隔で連なっているような「既存集落」の中にあることが求められます。

敷地面積にも制限があり、多くの自治体で原則500㎡以内と定められています。

計画地がこれらの条件を満たしているか、土地の登記情報やハザードマップなどを確認し、事前に自治体へ相談することが不可欠です。

建物に求められる条件

建築する建物は、申請者自身が家族と住むための「専用住宅」であること、そして規模が大きすぎないことが求められます。

これは、あくまで個人の居住を目的とした特例であり、事業目的での利用は認められないためです。

店舗や事務所、賃貸アパートなどを併設することはできません。

建物の規模についても、自治体ごとに上限が定められており、例えば福島県では住宅の延床面積は280㎡以内、車庫は45㎡以内が基準とされています。

設計の段階から、計画している建物が自治体の定める用途や規模の基準に適合しているか、建築士などの専門家と綿密に確認することが大切です。

自治体によって異なる詳細な基準の存在

これまで説明してきた要件はあくまで一般的なものであり、実際には各自治体が地域の状況に合わせて独自の詳細な基準を定めていることを理解しておく必要があります。

全国一律のルールではないため、思い込みで計画を進めるのは危険です。

例えば、愛知県豊田市では本家との距離を「最短55m以内」と定めたり、埼玉県越谷市では建物の高さを「10m以下」に厳しく制限したりするなど、自治体ごとに特色があります。

大阪府東大阪市のように、本家の要件として「線引き後20年以上居住」を明記しているケースもあります。

計画を具体化する最初のステップとして、建築予定地を管轄する市役所や町役場の都市計画担当課へ必ず相談に行きましょう。

ご自身のケースで適用される正確な要件を確認することが、スムーズな手続きへの第一歩となります。

自治体への相談から許可までの手続きと流れ

分家住宅の建築許可を得るための手続きは、複雑で多くの段階を踏む必要があります。

特に、計画を具体的に進める第一歩として、まずは自治体の担当窓口へ事前相談に行くことが何よりも重要です。

事前相談から許可が下りるまでには、半年から1年近くかかることも珍しくありません。

書類の準備から申請、審査まで手続きは多岐にわたるため、全体像を把握し、余裕を持った計画を立てて進めましょう。

最初に行うべき担当窓口との事前相談

「事前相談」とは、ご自身の計画がそもそも許可される見込みがあるのか、最初に自治体の見解を確認するための重要なステップです。

正式な申請の前に相談することで、無駄な時間や費用をかけるリスクを減らせます。

市役所や町役場の「都市計画課」や「開発指導課」といった部署が担当窓口となるのが一般的です。

相談の際は、建築予定地の場所がわかる地図や公図、土地の登記簿謄本などを持参すると、担当者も具体的なアドバイスをしやすくなります

この段階で、許可の可能性や必要な手続き、準備すべき書類について詳しく確認しておくと、その後の進行がスムーズになります。

親族関係や土地所有を証明する主な必要書類

分家住宅の許可はあくまで特例的な措置のため、申請者がすべての要件を満たしていることを、客観的な書類で厳密に証明しなくてはなりません

そのため、非常に多くの書類の提出が求められます。

自治体によって必要書類は異なりますが、主に以下のような書類を準備する必要があります。

これらの書類は一例です。

実際に必要なものは、事前相談の際に担当窓口で必ず確認してください。

土地の状態によって変わる申請の種類

分家住宅を建てる際には、土地がすでに宅地として利用できる状態か、それとも造成工事が必要かによって、申請の種類が異なります。

主に「開発許可申請」と「建築許可申請」の2種類があり、どちらに該当するかで手続きの内容も変わってきます。

どちらの申請が必要になるかは専門的な判断を要するため、自己判断は禁物です。

自治体の担当者と相談しながら、適切な手続きを進めましょう。

農地の場合に必要となる農地転用許可

「農地転用許可」とは、田んぼや畑などの農地を、住宅地など農地以外の目的で利用するために必要な許可のことです。

もし建築予定地が農地であれば、先ほどの開発許可(または建築許可)とは別に、この農地転用の手続きも必要になります。

特に、生産性の高い優良農地が集まる「農用地区域(通称:青地)」に指定されている場合、原則として宅地への転用は認められず、手続きは極めて困難です

農地転用の手続きは開発許可の申請と並行して進める必要があり、全体のプロセスがさらに複雑化します。

このケースに該当する場合は、早い段階で行政書士などの専門家に相談することを強くおすすめします。

申請から許可までに要する期間

分家住宅の建築許可は、申請してすぐに下りるものではなく、相応の期間がかかることを理解しておく必要があります。

一般的に、自治体との事前相談を始めてからすべての許可が下りるまでには、少なくとも半年から1年、場合によってはそれ以上かかることもあります

書類の収集や作成、自治体内部での審査、そして場合によっては「開発審査会」という会議での審議が必要になることもあるためです。

家づくりの計画は、この期間を考慮し、余裕を持ったスケジュールで進めることが大切です。

建築後に知っておくべき売却・賃貸などの制限

分家住宅は、無事に建築できれば終わりというわけではありません。

建てた後には、一般の住宅とは異なる特有の制限が伴います。

特に、将来のライフプランに関わる第三者への売却や賃貸については、原則としてできないという点を計画段階で理解しておくことが重要です。

これは、分家住宅が特定の親族のために認められた例外的な許可であるためです。

この見出しでは、建築後に発生する可能性のある制限と、その対処法について詳しく解説します。

第三者への売却や賃貸の原則禁止

分家住宅は、許可を受けたあなた自身が家族と住むこと」を絶対的な条件として、特別に建築が認められた住宅です。

市街化を抑制するという区域の目的から、誰でも自由に売買できる物件が増えることは望ましくないとされています。

そのため、許可を受けた本人やその家族以外の第三者に、この住宅を売却したり賃貸に出したりすることは、原則としてできません。

もし許可なく売却や賃貸を行った場合、法律違反となる可能性があります。

将来的に転勤や住み替えの可能性がある場合は、この制限が大きな制約となることを念頭に置いておく必要があります。

やむを得ない事情で家を手放す際の「用途変更」手続き

もし、どうしても家を手放さなければならない事情ができた場合、諦める必要はありません。

その際は、分家住宅から誰でも住める「一般住宅」へと目的を変える「用途変更」という特別な許可手続きを行います。

この許可が得られれば、第三者への売却や賃貸が可能になります。

ただし、用途変更が認められるのは、建築から10年以上が経過していることや、所有者の死亡、破産、遠方への転勤といった、社会通念上やむを得ないと判断される場合に限られます。

この用途変更の手続きも、分家住宅の建築許可と同様に自治体の審査が必要となり、必ず許可されるとは限りません。

相続した場合の取り扱い

親から子へ、というように相続人が引き続きその分家住宅に住み続けるのであれば、通常は特別な手続きは必要ありません

許可を受けた親族としての立場が引き継がれるため、そのまま居住を継続できます。

問題となるのは、相続はしたものの誰も住む予定がなく、売却や賃貸を検討する場合です。

このケースでは、相続人が所有者になった後で、先ほど説明した「用途変更」の許可を自治体から得る必要があります。

相続によって自動的に制限が解除されるわけではないため、注意が必要です。

将来の相続まで見据えて、家族内で意思を確認しておくことが望ましいです。

計画を円滑に進めるための専門家への相談

ここまでご説明したように、分家住宅には建築時から建築後まで、専門的なルールが数多く存在します。

これらの複雑な手続きや要件をすべてご自身だけで調べて判断するのは、とても難しい作業です。

計画をスムーズかつ確実に進めるためには、早い段階で専門家の知識を借りることが不可欠となります。

まずは自治体の担当窓口で基本的な情報を確認し、具体的な手続きを進める段階では、行政書士や市街化調整区域での建築実績が豊富な建築会社に相談することをおすすめします。

専門家は、あなたの状況に合わせた最適な方法を提案し、時間のかかる手続きを代行してくれる頼れるパートナーになります。

費用はかかりますが、結果として時間や労力を大幅に節約し、後々のトラブルを防ぐことにつながります。

よくある質問(FAQ)

分家住宅を建てられる「三親等以内の親族」とは具体的に誰までですか?

三親等以内の親族とは、本家の世帯主から見て、子や孫、ひ孫、そして兄弟姉妹や甥・姪までが範囲に含まれます。

ただし、この条件は自治体によって解釈が異なる場合があるため、ご自身の親族関係が要件を満たすか、計画の初期段階で役所の担当窓口へ確認することが重要です。

すでにある古い家を分家住宅として建て替えることは可能ですか?

可能な場合もありますが、注意点があります。

市街化調整区域が指定される「線引き前」から建っている家などの条件を満たせば、建て替えも認められます。

しかし、新しく建築する建物の敷地面積や規模には自治体ごとの基準が定められています。

元の家より大幅に大きくすることはできないケースが多いため、建て替えの要件について事前に確認が必要です。

開発許可の申請手続きにはどれくらいの費用がかかりますか?

開発許可の申請そのものにかかる手数料は数万円程度ですが、それ以外に土地の測量費や各種図面の作成費、専門家への依頼費用などがかかります。

例えば、開発許可や農地転用の手続きを行政書士に依頼した場合、数十万円から100万円以上かかるのが一般的です。

土地の状況によって費用は大きく変わるため、複数の専門家から見積もりを取ることをおすすめします。

本家の土地が農地(畑や田んぼ)なのですが、家を建てることはできますか?

農地であっても、条件を満たせば家を建てることは可能です。

その場合、通常の建築許可とは別に、「農地転用」という特別な許可手続きが追加で必要です。

特に、生産性の高い優良農地が集まる「農用地区域」内の土地は、原則として宅地への転用が認められないため注意しなくてはなりません。

分家住宅の建築許可が下りないのは、どのような場合ですか?

例えば、申請者自身がすでに家や建築可能な土地を所有している場合や、建築予定地が既存の集落から孤立している場所である場合などは、許可が下りない代表的なケースです。

また、親から土地を贈与されるのではなく購入した場合も、原則として認められません。

この制度は、住宅に困っている(住宅困窮性)親族のための特例だという点を理解することが大切になります。

将来、建てた分家住宅を売却したり賃貸に出したりすることはできますか?

原則として、許可を受けた本人やその家族以外の人への売却や賃貸はできません。

これは、特定の個人のために建築が認められた特別な住宅だからです。

もし所有者の死亡や遠方への転勤などやむを得ない事情がある場合は、「用途変更」の許可を得ることで一般住宅として売却などが可能になる道があります。

この手続きには、建築から10年以上経過しているなどの条件が設けられています。

まとめ「市街化調整区域内の分家住宅とは?」

市街化調整区域にある本家の土地に家を建てるには、「分家住宅」の制度を利用します。

しかし、この特例的な許可を得るためには、申請者・本家・土地・建物の4つの側面から定められた厳しい要件を、すべて満たす必要があります。

ご自身の計画が要件に当てはまるか判断するために、まずは建築予定地を管轄する自治体の都市計画担当課へ相談に行くことから始めましょう。

アドバイスが必要な場合は、私たちにご相談ください。初回無料「何が問題か」を切り分けます。

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