「土地が安いから」という理由だけで、市街化調整区域の物件を購入するのはおすすめできません。
出口戦略(将来の売却や相続)を描けないまま購入すると、深刻な「負動産」を抱えるリスクがあります。市街化調整区域は市街化を抑制すべき区域として法律で定められており、建築制限・融資制限・インフラコストの3つが重荷になるからです。
ただし、すべてのケースで購入を避けるべきというわけではありません。建築可能性を徹底的に調査し、地域特性を見極めれば、お買い得な物件が見つかる可能性もあります。
本記事では、長年にわたって市街化調整区域の物件を調査してきた筆者が、統計データと実務知見を組み合わせて「買わない方がいい」といわれる本当の理由と、例外的に購入してもよいケースを解説します。
市街化調整区域の物件を安いからという理由だけで買うべきではない

市街化調整区域の物件は、価格の安さに目を奪われて購入すると、将来的に大きな損失を被るリスクがあります。
都市計画法に基づき、市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」と定義されています。つまり、国や自治体が「ここは街づくりをしない」と決めたエリアです。そのため、建物の建築や宅地造成が原則として禁止されており、道路・上下水道・公共交通といったインフラ整備も後回しにされます。
国土交通省の公示地価データによれば、三大都市圏の市街化区域では2024年に全用途平均で前年比3.5%上昇した一方で、市街化調整区域が多く含まれる地方圏では30年前と比較しても地価が下落し続けているエリアが目立ちます。
将来の出口戦略が描けないなら見送るべき
出口戦略(売却・相続)の見通しが立たない土地は、購入を避けた方がいいでしょう。
筆者が実務で何度も目にしてきたのは、「安いから買ったけれど、いざ売ろうとしたら買い手が全く見つからない」というケースです。市街化調整区域の土地は、住宅ローンの担保評価が市街化区域に比べて大幅に低く設定されます(ただし個別のケースによる)。
たとえば、相場1,200万円の土地であっても、銀行の担保査定額は700万円程度(相場の約60%)まで減額されることもよくあります。これは、万が一返済が滞った際に、銀行が物件を競売などで処分して債権を回収するのが困難だと判断されるためです。
さらに気になるのは、次世代への継承の問題です。国土交通省の「令和5年度 土地問題に関する国民の意識調査」では、土地・建物の相続について「何も対応していない」と答えた人が51.3%と半数を超えています。子供の世代が親の所有する調整区域の土地を引き継ぐ意思が薄く、結果として「負動産」化するリスクが極めて高いとの指摘もあります。
ただし一定の条件を満たす場合のみ検討の余地あり
すべての市街化調整区域が購入NGというわけではありません。建築可能性と地域特性を見極めれば、お買い得な物件も見つかります。
筆者の実務経験からいえば、市街化調整区域で土地を買ってもよいケースは以下の3つといえるでしょう。
- 建築可能であることが確認できている(都市計画法第34条の立地基準をクリアしている)
- 人口減少が進んでいない地域である(大都市周辺、沖縄本島など、今後も市街地が広がる見込みがある)
- インフラ(上下水道・公共交通)が既に整っており、今後も維持される見通しがある
逆にいえば、これらの条件を満たさない場合は、価格が安くても購入は見送った方がいいでしょう。
特に人口減少が続く過疎地域では、公共交通機関の廃止やインフラの老朽化が進んでおり、将来的な利便性の低下が避けられません。
たとえば、和歌山県では南海本線の紀ノ川橋梁が老朽化しており、修復予算次第では橋梁より先の区間が廃線になる可能性も指摘されています。こうした地域で市街化調整区域の土地を買うことは、インフラ縮小リスクを丸抱えすることを意味します。
買わない方がいいといわれる4つのリスク

市街化調整区域が「買わない方がいい」といわれる理由は、①建築制限、②融資制限、③追加コスト、④流動性の低さという4つのリスクに集約されます。
これらは単独でも深刻ですが、複合的に作用することで、購入者の資金計画や生活設計を大きく揺るがします。以下、順に解説しましょう。
建築制限|家を建て替えるのに都道府県知事の許可が必要
市街化調整区域では、家を建てる・建て替えるために都道府県知事の開発許可が必要です。この許可を得られるかどうかが、土地の価値を左右します。
都市計画法第34条に定められた立地基準をクリアしない限り、原則として建築はできません。この基準は自治体ごとに異なる条例(11号条例、12号条例など)で細かく定められており、同じ「市街化調整区域」という名称でも、都道府県をまたぐと規制が全く変わります。
たとえば、大阪府では「建物の連たん(連続性)」が厳しくチェックされます。建物間の距離が55メートル以内で連続していることや、1ヘクタールあたり6棟以上の密度があることなどが基準となり、わずかな距離の差で「建築不可」と判定されるケースがあります。
筆者が実務で最も注意しているのは、「何が建てられるか」という点です。たとえば、分家住宅(農家等の次男・三男用の住宅)が建てられる土地は、属人性が非常に高く、出口戦略がほとんど描けません。将来売却する際、買い手は「分家住宅の許可要件を満たす人」に事実上限定されるためです。
一方で、大規模既存宅地(一定の要件を満たす宅地)であれば、自己用住宅なら建築が認められるケースもあります。ただしこの場合も、売却時には「自己用住宅を買い求める人」向けとなり、買い手の層が狭まります。
役所の窓口に行く前に、必ず自分でその都道府県の条例を調べてください。「建てられるかどうか教えてください」という漠然とした質問では、役所の職員が親切に答えてくれることはほぼありません。こちらが事前に調べた上で、「この条例の第○号に該当するかどうか確認したい」と具体的に聞くことが重要です。
融資制限|ネット銀行などはほぼ全滅で住宅ローンの選択肢が狭い
市街化調整区域の物件は、住宅ローンの審査が極めて厳しく、大手銀行やネット銀行では融資対象外とされるケースが多くあります。
これは、銀行が物件の「再建築可能性」と「処分価値」を重視するためです。万が一返済が滞った際、銀行が物件を競売などで処分して債権を回収する難易度が高いと判断されるため、担保評価が大幅に減額されます。
具体的な計算例を示します。
土地相場1,200万円の市街化調整区域の物件の場合:
- ①銀行基準評価額:1,000万円(公示地価などをベースに、相場の80%程度)
- 担保査定額:700万円(基準評価額に「担保掛け目」70%程度を乗算)
- 融資可能額:担保査定額の範囲内、または条件付きでの増額
つまり、1,200万円の物件を買うために住宅ローンを組もうとしても、融資額は700万円程度にとどまり、残りの500万円は自己資金で用意しなければならないケースが多いのです。
例外的に住宅金融支援機構の「フラット35」は比較的門戸が広く、市街化調整区域であっても建物基準を満たせば融資対象となる可能性があります。ただし、フラット35でも建築許可が下りていることが前提条件です。
不動産買取会社も市街化調整区域には慎重です。買取会社が土地を仕入れて造成・分譲しようとする際、金融機関からのプロジェクト融資(仕入融資)が制限されることがあるからです。これは、開発許可が最終的に下りないリスクや、完成後の販売不振リスクを銀行が警戒するためです。結果として、買取査定額は市街化区域に比べて大幅に低くなります。
追加コスト|上下水道の整備に数百万円かかる場合も
市街化調整区域では、上下水道の引き込み工事や受益者負担金など、購入後に数百万円単位の追加コストが発生するケースがあります。
前面道路に公共の上下水道本管が通っていない場合、その引き込み工事費用はすべて所有者の自己負担です。以下に目安を示します。
上下水道引き込み工事の費用目安:
- 配管延長20メートル前後(近接):上水道30万〜50万円、下水道30万〜50万円、合計60万〜100万円
- 配管延長50メートル前後(中距離):上水道75万〜100万円、下水道40万〜60万円、合計115万〜160万円
- 配管延長100メートル超(長距離):上水道150万円以上、下水道70万〜90万円、合計220万円以上
これらの費用は、道路の舗装復旧費や警備員配置費、夜間規制の有無によってさらに増大します。筆者が実際に経験したケースでは、100メートル程度の引き込みで総額300万円を超えたこともあります。
さらに、公共下水道が整備されているエリアであっても、「受益者負担金」という名目の支払いが必要です。これは土地の面積に応じて算出されます。
自治体別の下水道受益者負担金(例):
- ふじみ野市(埼玉県):1平方メートルあたり1,240円(100坪/330平方メートルの場合、約40.9万円)
- 和泉市(大阪府):1平方メートルあたり500円(100坪/330平方メートルの場合、約16.5万円)
- 佐野市(栃木県):1平方メートルあたり300円(100坪/330平方メートルの場合、約9.9万円)
- 城陽市(京都府):1敷地につき20万円(定額方式)
これらの負担金は、一括納付のほかに分割納付(3年〜5年)が認められる場合もあります。購入前に必ず自治体の都市計画課で確認してください。
土地が安いからといって飛びつくと、インフラ整備費で初期コストの優位性が吹き飛びます。筆者は、物件価格に加えて「インフラ整備費+受益者負担金」を合算した「トータルコスト」で市街化区域の物件と比較するよう、必ずアドバイスしています。
流動性|買い手が見つかるまで数年単位で売れない可能性
市街化調整区域の物件は、売却しようとしても買い手が見つかるまで数年単位の時間がかかることがあります。
国土交通省の「令和5年度 土地問題に関する国民の意識調査」では、国民が身近に感じる土地問題の上位に「空き家・空き地や閉鎖された店舗が目立つこと」があげられています(52.4%)。特に市街化調整区域が多く含まれる町村部では、この割合が62.6%に達しています。
これは、市街化調整区域の土地を取得しても、将来的に周辺が「ゴーストタウン化」するリスクや、隣接地の放置による住環境の悪化(雑草、不法投棄、不審者の侵入)を招くリスクがあるからです。
さらに心配なのは、相続対策が考えられていないこと。
調査では、土地・建物の相続について「何も対応していない」と答えた人が51.3%と半数を超えています。親の所有する調整区域の土地を引き継ぐ意思が希薄であり、相続が発生した際に「誰も欲しがらない負動産」となるリスクが高い状況です。
筆者が実務で見てきた限り、市街化調整区域の土地は「1か月で売れる」どころか、半年から数年単位で売れ残ることが珍しくありません。買い手は「建築可能性を自分で調査できる不動産のプロ」か「その土地に永住する覚悟がある人」等に限定されるため、市場が極端に狭いと感じます。
土地の価値を左右する法的根拠を知る

市街化調整区域の土地の価値は、都市計画法第34条の立地基準と、自治体独自の条例によって決まります。
この法的根拠を理解しておかないと、「安いから買ったのに建てられなかった」「建てられても売れなかった」という失敗に直結します。
都市計画法34条と自治体独自の条例
都市計画法第34条は、市街化調整区域で建築が認められる例外的なケースを定めた条文です。この運用は自治体の条例に委ねられており、同じ「市街化調整区域」でも都道府県によって建築可能性が全く異なります。
以下に、第34条の主な規定と実務上のポイントを示します。
都市計画法第34条の主な規定:
- 第1号:周辺住民の日常生活に不可欠な施設(コンビニ、診療所、理美容店など)→既存集落内または隣接地に限定され、大規模施設は不可
- 第11号:条例で指定された既存集落(50戸以上の連たんなど)内での開発→自治体が指定した区域内に限られ、建物の用途や規模に制限がある
- 第12号:地域特性に応じた事業用施設や分家住宅など、自治体独自の条例基準→分家住宅(農家の次男・三男用など)のように、申請者の属性が問われるケースが多い
- 第14号:開発審査会の議を経て個別に許可されるもの→他の号に該当しないが、やむを得ない事情があり周辺環境に支障がない場合に限られる
筆者が実務で最も重視しているのは、「どの号に該当するか」を事前に確認することです。具体的な条文を読んでおくと、役所担当者から、より具体的な回答を引き出せるからです。
都道府県をまたぐと規制が全く変わります。沖縄県と大阪府では、同じ「市街化調整区域」でも建築可否を決める条例が異なります。筆者は、物件を検討する際、必ずその都道府県の条例を事前に調べてから役所の窓口に行くようにしています。
2026年現在のコンパクトシティ政策が与える影響
コンパクトシティ政策は、都市機能を集約し効率的な街づくりを目指すものですが、市街化調整区域の価値にはマイナスの影響を与えます。
この政策により、自治体は市街化調整区域におけるインフラ整備への投資を抑制したり、災害リスクの高い区域では開発許可をさらに厳格化したりする傾向にあります。その結果、市街化調整区域は長期的に見て、さらに利便性が低下し、資産価値が目減りするリスクが高まります。
ただし、コンパクトシティ政策の影響は都道府県によって大きく異なります。筆者の実務経験からいえば、沖縄県や大阪府ではコンパクトシティ政策の影響を、あまり受けていません。沖縄県はそもそもコンパクトシティ化を提唱していませんし、大阪府も同様です。
一方で、人口減少が進む長野県、富山県、香川県などでは影響が大きいといわれています。コンパクトシティ化が進むと、その周辺の市街化調整区域はより一層市街化を抑制されるため、インフラの縮小や公共交通機関の廃止が現実化しやすくなります。
筆者がいる大阪府に隣接する和歌山県では、南海本線の紀ノ川橋梁が老朽化しており、修復予算次第では橋梁より先の区間が廃線になる可能性も指摘されています。こうした地域で市街化調整区域の土地を買うことは、公共交通機関の縮小リスクを丸抱えすることを意味します。
さらに、2022年4月1日に施行された改正都市計画法も重要です。この改正により、災害レッドゾーン(災害危険区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域)内での開発行為は原則として禁止されました。これまで規制が緩やかだった「自社の事務所、倉庫、工場」などの業務用施設も新たに規制対象に追加されたため、市街化調整区域内で事業を営もうとする企業の土地需要が限定され、地価への下押し圧力が強まっています。
それでも買ってもいいケースと失敗しないためのチェックリスト

すべての市街化調整区域が購入NGというわけではありません。一定の条件を満たす場合のみ、検討の余地があります。
筆者の実務経験から、市街化調整区域で土地を買ってもよいケースは以下の3つです。
- 建築可能であることが確実に確認できている(都市計画法第34条の立地基準をクリアしている)
- 人口減少が進んでいない地域である(沖縄本島など、今後も市街地が広がる見込みがある)
- インフラ(上下水道・公共交通)が既に整っており、今後も維持される見通しがある
逆にいえば、これらの条件を1つでも満たさない場合は、どれだけ価格が安くても購入を見送るべきです。
農業従事者や分家住宅などの場合
農業従事者や、農家の親族として分家住宅を建てられる場合は、市街化調整区域でも建築が認められるケースがあります。
ただし、これらのケースは属人性が非常に高く、出口戦略がほとんど描けません。将来売却する際、買い手は「その要件を満たす人」に限定されるためです。
たとえば、分家住宅(農家の次男・三男用の住宅)が建てられる土地は、都市計画法第34条第12号に基づく条例で認められることが多いのですが、「本家がこの市街化調整区域内に長い間ある」「次男または三男である」といった要件があります。このような土地を一般の人が買っても、建築許可が下りない可能性が高いのです。
筆者が実務で最も注意しているのは、「誰が買えるか」という点です。分家住宅の許可要件を満たす人は限られているため、市場がごく狭く、売却時に苦労することが目に見えています。自分が永住するつもりで買うならよいのですが、将来の転勤や家族構成の変化を考えると、リスクが高いといわざるをえません。
一方で、大規模既存宅地(一定の要件を満たす宅地)に該当する場合は、自己用住宅であれば多くの人が建築可能なケースがあります。ただし、これも都道府県や各地方の条例によって異なるため、事前にしっかりと調査することが必要です。
役所の都市計画課で必ず確認しておきたい項目
市街化調整区域の物件を購入する前に、役所の都市計画課で以下の項目を必ず確認してください。
- この土地は都市計画法第34条の何号に該当するか
- 建築可能な建物の用途・規模に制限はあるか
- 上下水道の本管は前面道路に通っているか、引き込み工事の費用目安はいくらか
- 受益者負担金の有無と金額
- 災害レッドゾーン(災害危険区域、土砂災害特別警戒区域など)に該当しないか
- 浸水想定区域に該当しないか、想定浸水深はどの程度か
- コンパクトシティ政策の影響で、将来的にインフラが縮小される可能性はないか
これらの情報は、重要事項説明書だけでは不十分です。不動産会社が「建築可能です」と説明していても、実際には条件付きであったり、将来の建て替えが認められなかったりするケースがあります。
筆者は、役所の窓口に行く前に、必ず自分でその都道府県の条例を調べます。「建てられるかどうか教えてください」という漠然とした質問では、役所の職員が親切に答えてくれることはあまりありません。こちらが事前に調べた上で、「この条例の第○号に該当するかどうか確認したい」と具体的に聞くことが重要です。
さらに、現地に足を運び、周辺の建物の状況を確認することも欠かせません。建物が連続して建っているか、空き家が目立たないか、道路や公共施設の整備状況はどうかなど、統計や法律だけでは分からない「生の情報」を自分の目で確かめてください。
まとめ|安さの裏にある将来のコストを計算する

市街化調整区域の物件は、価格の安さという表面的なメリットの裏に、①建築制限、②融資制限、③追加コスト、④流動性の低さという4つの深刻なリスクが内包されています。
特に、2022年4月施行の改正都市計画法により、災害レッドゾーン内での開発が原則禁止されたことで、将来の建て替えが法律によって封じられるリスクも加わりました。さらに、コンパクトシティ政策の影響で、人口減少地域ではインフラの縮小や公共交通機関の廃止が現実化しつつあります。
筆者の実務経験からいえば、市街化調整区域で土地を買ってもよいのは、①建築可能性が確実、②人口減少が進んでいない地域、③インフラが整っている、という3つの条件をすべて満たす場合のみです。これらの条件を1つでも満たさない場合は、どれだけ価格が安くても購入を見送ることを強くおすすめします。
「安い」という理由だけで飛びつくと、数年後に「売れない」「建て替えられない」「子供に継承できない」という三重苦に直面するリスクがあります。購入前には必ず役所の都市計画課で建築可能性とインフラ整備費を確認し、トータルコストで市街化区域の物件と比較してください。
将来の出口戦略を描けないまま購入することは、負動産を抱えることに等しいのです。安さの裏にある将来のコストを直視し、慎重な判断を心がけてください。


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