市街化調整区域の11号と12号の違いとは|調査実務5つの手順

市街化調整区域の物件調査でやっかいなのは、都市計画法における11号と12号など建築可能となる条件の「違い」を押さえること。

両者の違いは「誰が家を建てられるか」という属人性の有無にあり、土地の資産価値に影響を与える要因です。

この記事では、11号と12号の明確な違いから、実務で必須となる具体的な調査手順、自治体ごとの条例の違い、そして混同しやすい旧既存宅地制度との関係まで、実務寄りの視点でわかりやすく解説します。

目次

市街化調整区域における11号と12号の決定的違い

市街化調整区域の土地を取り扱う上で、都市計画法第34条の11号と12号の違いを理解することは不可欠です。

両者の最も重要な違いは、「誰でも建築できるか、特定の人のみが建築できるか」という属人性の有無にあります。

この根本的な違いは、土地の資産価値に直接影響します。

以下の表で、申請者の要件から売却の難易度まで、両者の相違点を確認しましょう。

申請者の要件が土地の流動性や担保価値を大きく左右するため、お客様への説明には細心の注意が求められます。

市街化を抑制する区域という大前提

市街化調整区域とは、無秩序な市街地の拡大を防ぎ、市街化を抑制すべき区域を指します。

そのため、原則として新たな開発行為や建築は認められていません。

この大前提がある中で、地域の実情に合わせて例外的に建築を認める規定が、都市計画法第34条に定められています。

その中でも特に自己用住宅の建築に関わるのが11号と12号の規定です。

この例外規定を正しく理解することが、市街化調整区域の土地取引における第一歩となります。

「場所」の要件で判断する都市計画法第34条第11号

都市計画法第34条第11号は、「場所」に着目して建築の可否を判断する制度です。

市街化区域に隣接または近接する地域で、すでにおおむね50戸以上の建築物が連なっている集落などが対象になります。

自治体が条例で指定したこの区域内であれば、申請者の居住歴や血縁関係といった属人的な要件は問われません

つまり、条件を満たす区域であれば誰でも自己用住宅などを建築することが可能です。

そのため、12号の土地と比較して第三者への売却がしやすく、資産価値も維持されやすい傾向にあります。

「人」の要件で判断する都市計画法第34条第12号

都市計画法第34条第12号は、「人」の要件、つまり属人性に着目して建築を許可する制度です。

地域の慣習などを考慮し、特定の条件を満たす人のために自治体が条例で定めます。

例えば、「市街化調整区域に20年以上居住する親族がいる」「農家の分家住宅を建てる」といった、申請者の属性が許可の必須要件となります。

許可を受けた本人やその親族しか再建築が認められないケースが多く、買い手も同じ要件を満たす必要があるため、第三者への売却は極めて難しくなります。

申請者・再建築・資産価値の相違点

11号と12号では、土地の資産価値が大きく異なる可能性もあります

とくに大きく影響する論点は、これまで見てきた申請者要件の違いです。

誰でも建築できる11号の土地は、所有者が変わっても再建築が可能なため、一般的な土地(市街化区域内)に近い感覚で取引できます。

一方で、特定の「人」に紐づく12号の土地は、一度建築許可を受けた人が手放すと、次の買い手が同じ要件を満たさない限り家を建てられません。

この「再建築不可」リスクが、売却を困難にし、住宅ローン審査を厳しくする大きな要因となるのです。

実務における物件調査5つの手順

市街化調整区域の調査で最も重要なのは、机上調査で完結させず、必ず管轄自治体の担当窓口で直接ヒアリングを行うことです。

思い込みや古い情報でお客様に説明してしまうと、取り返しのつかないトラブルに発展します。

ここでは、私たちが実務で踏むべき調査手順を5つのステップに分けて解説します。

手順1 自治体の都市計画担当課への事前確認

物件調査の第一歩は、その土地を管轄する自治体の都市計画担当課(開発指導課など名称は自治体により異なる)へ電話でアポイントを取ることから始まります。

訪問前に地番を伝え、11号や12号の指定状況、関連する条例、過去の許可履歴の有無などを事前に照会しておくと、窓口でのヒアリングがスムーズに進みます。

窓口で事前確認しておくと、窓口訪問する前に、事前調査を行う項目に気づける可能性もあります。

手順2 区域指定の有無と条例内容の調査

窓口では、対象の土地が都市計画法第34条第11号または第12号に基づく条例の指定区域に含まれるかどうかを、必ず地図上で確認してもらいます。

例えば、埼玉県川越市のようにかつて存在した11号区域を条例改正で廃止した自治体も存在します。思い込みで判断せず、必ず地図上での確認を行ってください。

指定の有無だけでなく、条例がいつ制定・改正されたものなのか、その変遷まで確認することが重要です。

インターネット上の情報だけを鵜呑みにせず、最新の条例と区域図を自身の目で確認する作業が不可欠になります。

手順3 建築可能な建物の用途・規模の把握

区域指定が確認できたら、次にその区域で建築が認められている建物の用途、敷地面積、建ぺい率、容積率、高さなどの具体的な制限をヒアリングします。

滋賀県栗東市の例では、同じ12号指定区域でも住宅地区と工業流通業務地区があり、前者では敷地面積500平方メートル以内の自己用住宅、後者では3,000平方メートル以上の工場など、目的によって要件が全く異なります。

「家が建てられる」という大枠の情報だけでなく、どのような規模や用途の建物が建築可能なのか、条例の細部まで踏み込んで確認する必要があります

手順4 属人性、つまり申請者要件の適合性確認

特に12号区域の調査で最も重要なのが、「属人性(ぞくじんせい)」、つまり建築許可を申請できる人が限定されているかどうかの確認です。

12号条例では、「対象地に20年以上居住する親族がいること」といった地縁・血縁に関する要件が定められているケースが一般的です。

この要件は、土地の購入を検討しているお客様が満たせるのか、慎重な確認が必須となります。

この属人性があるために、土地の所有者が変わると再建築ができなかったり、売却が極めて困難になったりします。

お客様へのリスク説明における最重要項目です。

手順5 ハザードマップによる災害リスクの検証

最後の仕上げとして、ハザードマップを用いて、対象地が災害リスクの高いエリアに含まれていないかを検証します。

2022年4月の法改正により、土砂災害特別警戒区域などの「災害レッドゾーン」は、原則として11号・12号の指定区域から除外されることになりました。

現在は指定があっても、将来のハザードマップ見直しで指定が解除され、建築不可になるリスクも存在します。

重要事項説明における説明義務はもちろんのこと、お客様の安全と資産を守る専門家として、災害リスクの確認は絶対に省略できない調査手順です。

自治体ごとに異なる条例の運用事例

都市計画法第34条の11号・12号の運用は、法律で大枠が定められているものの、具体的な内容は各自治体の条例に委ねられています。

そのため、対象エリアの自治体がどのような条例を定めているかを確認することが、実務において最も重要です。

ここでは、特徴的な運用をしている2つの市の事例を見ていきましょう。

これらの事例からもわかるように、全国一律のルールは存在しません。

物件調査の際は、必ず管轄の自治体の都市計画担当課に最新の条例内容を確認する必要があります。

11号区域を廃止した埼玉県川越市のケース

埼玉県川越市は、かつて運用していた11号区域の指定を2011年1月の条例改正で廃止した自治体の一つです。

したがって、現在、川越市の市街化調整区域では11号条例を根拠に新たに家を建てることはできません。

現在は12号条例に基づいて開発許可の判断が行われますが、その要件は属人性が強く、誰でも利用できるものではありません。

例えば、「川越市または隣接市町の市街化調整区域に20年以上居住している親族がいること」や「1970年8月25日以前から本人または親族が所有する土地であること」といった、長期間の居住実態や土地所有の経緯が問われます

川越市の土地を扱う場合、「昔は11号で建てられた」という過去の情報に惑わされず、現在の厳しい12号条例の要件を正確に調査し、買主様が該当するのかを慎重に判断することが不可欠です。

複数の指定区域を併用する滋賀県栗東市のケース

滋賀県栗東市は、11号区域と12号区域を併用し、市の開発方針に沿って戦略的に区域を指定している事例です。

市街化調整区域における無秩序な開発を抑制しつつ、地域の活力を維持するための計画的な土地利用を進めています。

具体的には、既存集落の維持を目的として市内13地区で11号区域を指定する一方、12号条例に基づき、自己用の住宅を建築できる区域(3地区)や、自己の業務用の工場などを建築できる工業流通業務地区(2地区)を別途指定しています。

これにより、地域の特性に応じた開発を誘導しているのです。

このように、自治体によっては複数の指定区域を目的別に使い分けている場合があります。

調査の際には、どの指定区域に該当するのかだけでなく、その区域で許可される建物の用途や規模まで詳しく確認することが重要です。

条例改正による将来的な指定見直しの可能性

お客様にご説明する上で忘れてはならないのが、条例は永続的なものではなく、将来的に見直される可能性があるという点です。

現時点で建築可能な土地であっても、法改正や社会情勢の変化によって、将来、資産価値が大きく変動するリスクをはらんでいます。

特に大きな影響を与えたのが、2022年4月の都市計画法改正です。

この改正により、災害リスク管理が厳格化され、「災害レッドゾーン(土砂災害特別警戒区域など)」や「浸水ハザードエリア」は、原則として11号・12号の指定区域から除外されることになりました。

今後、各自治体でハザードマップの見直しが進むにつれて、これまで建築可能だった土地が指定から外れ、「再建築不可」となるケースが出てくる可能性があります。

私たち宅地建物取引士は、現時点での建築の可否を伝えるだけでなく、こうした将来的なリスクについても誠実に説明する責任があります。

契約前には必ず最新のハザードマップを確認し、条例改正の動向にも注意を払う姿勢が求められます。

旧既存宅地制度との混同しないための基礎知識

市街化調整区域の調査において、お客様や地主様から「ここは昔から宅地だから家を建てられるはずだ」と言われるケースは少なくありません。

しかし、その認識を鵜呑みにしてしまうことが、不動産取引における最も重大なトラブルにつながります。

過去の経緯と現在の法規制は、全くの別物として捉える必要があります。

2001年に廃止された既存宅地確認制度

既存宅地確認制度とは、市街化区域と市街化調整区域を分ける「線引き」以前から宅地であった土地について、一定の要件を満たせば建築を認めていた制度です。

この制度は、市街化調整区域内での無秩序な宅地化を助長するなどの問題点から、2001年5月18日に施行された都市計画法改正によって完全に廃止されました。

したがって、現在では「既存宅地であること」を理由として、新たに建築許可を得ることはできません。

「昔から宅地」が通用しない現在の法解釈

「登記地目が宅地だから」「固定資産税を宅地として納めているから」といった事実は、現在の法律上、建築の許可が得られる直接的な根拠にはなりません

建築が可能かどうかは、あくまでその土地が現行の都市計画法第34条各号の要件や、自治体が定める条例に適合するか否かによって判断されます。

過去の経緯は参考情報の一つに過ぎず、法的な効力を持たないことを正確に理解しておくことが重要です。

建築許可の判断基準となる現行条例の重要性

現在の建築許可の可否は、国が定める都市計画法と、それに基づき各自治体が制定する条例によって決まります。

廃止された既存宅地制度の役割の一部は、現在の11号条例や12号条例が引き継ぐかたちで整備されました。

しかし、その運用は自治体によって大きく異なり、埼玉県川越市のように一度は制定した11号区域を廃止したケースも存在します。

そのため、対象物件を管轄する自治体の都市計画担当課で、最新の条例内容と指定状況を直接確認することが、私たち宅地建物取引士に課せられた不可欠な調査義務となります。

購入や売却前に伝えるべきメリットとデメリット

市街化調整区域の土地は、価格の安さなどの魅力がある一方、建築や売却に関する厳しい制限が存在します。

不動産のプロとして、メリットとデメリットの両面を正確に顧客へ伝え、将来のリスクまで十分に理解していただくことが信頼関係の基礎となります。

良い面だけを強調するのではなく、専門家として客観的な情報を提供し、お客様が納得のいく判断を下せるよう導くことが私たちの責務です。

メリット 土地価格と固定資産税の抑制

市街化調整区域の最大のメリットは、経済的な負担を抑えられる点にあります。

市街化が抑制されているため、土地の評価額が低く設定される傾向にあり、それが購入価格や固定資産税の安さに直結します。

例えば、埼玉県川越市のように最低敷地面積を200㎡以上と定めている自治体も多く、市街化区域に比べて安価に広い敷地を手に入れることも可能です。

広い庭や駐車スペースを確保したいというお客様にとっては、魅力的な選択肢となり得ます。

ただし、この価格の安さは建築制限というデメリットと表裏一体であることを、必ず合わせて説明する必要があります。

デメリット1 住宅ローンの厳しい審査

市街化調整区域の土地や建物は、金融機関からの評価が厳しくなるという大きなデメリットがあります。

特に、建築できる人が限定される「属人性」のある土地は担保としての価値が低いと判断され、住宅ローンの審査が極めて通りにくくなります。

誰でも建築可能な11号区域の物件であれば、まだローンを利用できる金融機関が見つかる可能性は残されています。

しかし、特定の親族要件などを満たす必要がある12号区域の物件では、担保評価が著しく低くなるため、多くの金融機関が融資に難色を示します。

土地の購入前に、お客様の資金計画や利用を検討している金融機関の方針を必ず確認し、ローンが通らないリスクについて事前に説明しておくことが不可欠です。

デメリット2 属人性による売却の困難さ

特に12号区域の土地が持つ「属人性」とは、特定の人のみが建築や再建築を許可されるという性質を指し、これが売却を困難にする最大の要因となります。

例えば、「その地域に20年以上住む地縁者の親族」といった条例の要件を満たす買主は、現実的にはほとんど見つかりません。

つまり、一度建物を建ててしまうと、将来的に売却したくても買い手が現れず、資産として流動性が著しく低い状態に陥るリスクがあります。

11号区域であれば、誰でも再建築が可能なため比較的売却はしやすいですが、12号区域の土地は「売れない不動産」になる可能性が高いことを、購入を検討しているお客様にはっきりと伝える義務があります。

デメリット3 上下水道などのインフラ整備費用

市街化調整区域は、その名の通り市街化を抑制するエリアであるため、上下水道やガス管といった生活インフラが整備されていないケースが多く見られます。

もし前面道路に配管がなければ、新たに引き込むための工事が必要になります。

特に排水先の確保ができない場合、浄化槽の設置や長い距離の配管工事で、場合によっては数百万から一千万円単位の追加費用が発生する可能性も否定できません。

土地の価格がいくら安くても、このインフラ整備費用を加算すると、結果的に市街化区域の土地と変わらない、あるいはそれ以上の総額になることがあります。

契約前に必ず役所の関連部署でインフラの整備状況を確認し、概算費用を把握しておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

11号と12号の土地で、資産価値が大きく違うのはなぜですか?

最も大きな違いは、その土地に家を建てられる人が限定される「属人性」の有無にあります。

11号区域の土地は、要件を満たせば誰でも家を建てることができ、再建築も可能なため資産価値が保たれやすいです。

一方、12号区域の土地は特定の親族など、限られた人しか家を建てられません。

所有者が変わると再建築ができないケースが多く、売却が困難になるため資産価値は低くなる傾向です。

登記地目が「宅地」なのに、家を建てられないのはなぜですか?

過去に家が建っていた、あるいは登記上の地目が宅地であるという事実だけでは、現在の法律では家を建てられる根拠になりません。

かつて存在した「既存宅地」だから建築できるという制度は2001年に廃止されました。

現在は、自治体が定める最新の条例に基づいて開発許可や建築許可が得られるかどうかが判断されるため、事前の確認が不可欠です。

12号条例の土地でも、住宅ローンを利用することはできますか?

非常に難しいのが現実です。

12号条例の土地は、建築できる人が限定される「属人性」があるため、第三者への売却が極めて困難です。

金融機関は土地や建物を担保として評価しますが、売却しにくい不動産は担保価値が低いと判断されるため、住宅ローンの審査は大変厳しくなります。

このデメリットについては、土地の購入前に必ず買主様へ説明する必要があります。

今は建築可能でも、将来建てられなくなるリスクはありますか?

はい、その可能性はあります。

特に注意すべきなのが災害リスクです。

2022年の法改正により、土砂災害特別警戒区域などのハザードマップで危険とされるエリアは、原則として区域指定から除外されることになりました。

現在は建築可能な土地でも、将来自治体によるハザードマップの見直しなどで区域指定が外れ、再建築ができなくなるリスクがあることを理解しておくべきです。

11号区域の指定を廃止する自治体があるのはなぜですか?

市街化調整区域における無秩序な開発を抑制し、計画的な街づくりを進めるという都市計画法の本来の目的に立ち返るためです。

11号区域は「誰でも」家を建てられるため、ミニ開発が進みやすい側面がありました。

人口減少社会を迎える中で、コンパクトな街づくりを目指す自治体などが、条例を見直して区域指定を廃止するケースが出てきています。

市街化調整区域の土地を購入する一番のメリットとデメリットは何ですか?

最大のメリットは、市街化区域に比べて土地の価格や固定資産税が安いことです。

一方、最大のデメリットは、建築や売却に厳しい制限がある点です。

特に上下水道などのインフラが未整備の場合、高額な工事費用が発生し、結果的に割高になる可能性があります。

メリットだけでなく、住宅ローンや将来の売却の困難さといったデメリットも十分に説明することが重要になります。

まとめ「最後は役所窓口で確認するのが確実」

この記事では、市街化調整区域における11号と12号の違いについて、プロの実務に役立つ調査手順から条例の具体例まで解説しました。

最も重要な点は、建築できる人が限定される「属人性」の有無が、土地の資産価値を全く違うものにするという事実です。

この記事で解説した調査手順を実践すれば、お客様からの信頼を得て、市街化調整区域の取引を自信を持って進められます。

まずは対象物件を管轄する自治体の都市計画課へ、一本電話をかけることから始めてみましょう。

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